世界中の「ぼく」が　ぐ〜たらなので　とても　こまります。
畑しごとにも　工場にも　でかけず
ぐ〜たら　ぐ〜たら　しているので
食べ物や　着る物や　住む家など
あらゆる物を　作ることが　できません。
宗教や　哲学もないので　政治家になる「ぼく」も　いません。
なにもないので　あらそいごとも　おこりません。

世界中が　「ぼく」だらけなので　つまりません。
見かけは　まるで　同じだし
考え方や　感じ方も　同じです。
それに　世界中の「ぼく」は　みんな　男です。
おっぱいが　ぼんと　つきでて　おしりの　大きい
さわると　とっても　気持ちの　いい　女が　いないので
なんだか　とても　つまりません。

世界中の「ぼく」は　つまらないのが　きらいなので
ぐ〜たら　しながら　考えました。
野球をしようと　考えました。
ところが　野球チームは　１１　できるのに
１人の　「ぼく」が　あまってしまいます。
不公平が　きらいな　「ぼく」は　あきらめました。

世界中の「ぼく」は　つぎに　考えつきました。
世界の　みんなで　歌を　歌おう　と。
歌ってみると　なんだか　つまりません。
まるで　いっしょの　声　まるで　いっしょの　リズム感。
わくわくする　音楽の　よろこびや　刺激が　まるで　ないのです。
すぐに　世界中の「ぼく」は　あきらめました。

そのうち　世界中の「ぼく」は　答えを　見つけました。
まったく　同じ　「ぼく」だらけの　世界は
なんて　つまらない　世界なんだろう　と。
その日から　「ぼく」は　ひとり　ひとり
べつの　方角に　向かって　歩きだしました。
もう　顔を　合わせない方が　いいだろう。
それが　世界中の「ぼく」の　出した　答えでした。

いま　世界中を　この「ぼく」ではない　べつの「ぼく」が
世界を　100人の　「ぼく」に　しようとしています。
宗教や　経済や　肌の色や　生活習慣の　違う　世界を
たった１人の　「ぼく」の価値観で　まとめてしまおうと
考えている　「ぼく」が　じつは　いるのです。
軍国主義や　ファシズムや　グローバリズムというのも
世界を　100人の　「ぼく」にしようという　考え方です。
世界が　ちがう人間　ちがう考え方　だからこそ
たっぷりと　おもしろいのにね。

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　おしまい