田舎の小学生時代、当時「映画教室」というのが年に１度ほどあって、それは出張映画上映会ではなく、小さな町の薄汚れた映画館だった。

　小学生高学年になったある年、見に行ったのは「フランダースの犬」で、その後に日本でアニメ化された映画ではなく洋画の実写版だった。登場した犬のことも、風車や木靴のことも、ほとんど忘れてしまった。唯一今でも鮮明に憶えているのが、ドラマ中に画家が裸婦を描いている場面で、そこでは美しいオトナの女がベッドに横たわり、白い背中を見せている光景だった。背中の端にそこだけが豊かに隆起している乳房の稜線も見えて、それは以来、僕の乳房願望の端緒になっているのかも知れないと思っている。

　さて、その当時から僕は映画少年で、映画館に出掛けるのはもちろん、当時ＮＨＫ教育テレビで時折オンエアされる洋画のほとんどを見ていた。
　忘れられない映画があった。イタリア映画の「にがい米」に登場したのは、なんとも野性的でグラマラスなシルヴァーナ・マンガーノで、ストーリーは出稼ぎ農婦役の彼女の周囲に起こる、なんとも感情の起伏の激しい出来事、すなわち「好いた惚れた」とケンカと窃盗騒ぎだったような気がする。実はもうほとんど憶えていないのだ。古い映画だから、当然ヌード・シーンなどというものがあるはずもないのだが、いまだにあの映画を越えるエロティシズムってものを、僕は知らない。
　単純なハナシだ。ノースリーブの作業着でマンガーノが一息つき、髪かなんかをかき上げる仕草をした瞬間、彼女の脇の下に豊かな体毛が現れたのだ。
　まだ僕自身に脇毛も陰毛も生えていない時期だったのに、あるいはだからこそなのかも知れないが、強烈にオトナの女のエロティシズムを感じた。

　剃り上げているのか、あるいは特殊な処理をしているのか、そこらへんはまるで知らないが、若い女性たちが脇毛を「親の仇」かまるで不潔・不浄のもののように駆逐しているさまを見ると、なんだか奇妙な気がする。きっとあれは、ハリウッド型女性美プロパガンダの世界侵略のなせるワザだと思っているが、どうだろうか。僕の目には、脇毛を含む女の脇は、女のカラダの中で最も美しい部分と映る。

　ヘソは出すワ、パンツは出すワ、上げ底ブラジャーで胸の谷間を見せることは平気だワって感性を持っているんなら、次は脇毛！　美しい女の財産の都会風区画整理なんざ、ちょいともったいない。