■オレオレ詐欺　8/30

　このところずっと続発しているのが、名前を告げずに親族それも子供か孫を装って急な要り用が出来たからと指定の口座に現金を振り込ませだまし取る「オレオレ詐欺」。コレを新聞紙面で見つけてふと思い出したのが、大いに身近な出来事。8月上旬にセガレがシゾーカ県掛川市の僕の母親の元を訪ねた翌早朝のこと。親戚関係で本家にあたる正面の素封家の電話が鳴った。相手は「オレ、オレ」と言い、交通事故を起こして急に賠償金が必要になったからカネを振り込んでくれ、と言うのだそうだ。はて？　その家の男孫はまだ高イビキで寝ているし、オレと言われて心当たりもない。で、電話を受けた本家の大母がひょっとして新家に遊びに来ている我がセガレの関連の友人からなのではないか？　などと気を回し、母の家のドアをたたいたというのだ。セガレは眠い目をこすりながら当初は何のコトかさっぱり要領を得なかったらしいし、本家の電話番号をメモしてさえいなかったから友人たちに教えられるはずもなく、結局「オレオレ詐欺」らしい電話はそのまま掛かってこなかったそうだ。本家の大母はそれでもさまざまに身近の人間に思いを馳せ、少しでも可能性があるからと早朝息せき切って30〜40mほどの距離を小走りに訪ねて確認したほどだから、これが万一男孫がまだ他県の大学から帰省していない時期だったら、かなりの確立でカネを振り込んじゃっていたのではないか、などと思う。老人は孫に甘い。まして田舎の素朴な人情感覚じゃ、やっぱりどう考えても引っかかりやすい。相手も確認せずに何とウカツな、とニュース報道には冷淡な反応を示しちゃうけれど、犠牲になりそうな善人は周囲にいくらでもいるんだナ、これが。
※通算何回目になるだろう。アメリカから抗生物質が届いた。今度こそ、今度こそ、この百錠で回復を果たしたいと思うのであった。ふんむむ。痛むゾ。
●今日の１句　　莫迦らしいほど中途半端な残暑ざんしょ？
●今日のもう１句　　伏してもいられぬ座してもいられぬ

■野球は塁球　8/29

　昼過ぎ、セガレのアメリカ土産だった「Take Me Out To The Ballpark」という球場ガイドグラビアみたいな3分の2円形みたいな本をペラペラとめくる。ジョー・ディマジオの昔、ヌーヨークにあったと言われるポログラウンドというのはマンハッタン北部だったそうで、ひょっとするとそれはセントラルパークに吸収されたのかも知れない。僕なんぞ古い数枚の写真しか見たことがなく、例の馬に乗ってするホッケーのようなポロを同一球場で行っていたのではないかと勝手に想像していたが、どうやら観客席が馬蹄形に設置されていたことからの命名であったらしい。何しろこの球場、モノの本にしばしば登場するのだ。で、あちこちの球場のディメンション(左右両翼などのフィールドのサイズのこと)を眺めてみると、何だか大いに面白く、1920年代ぐらいまでの球場とりわけセンターフィールドの距離がどこも異様なまでに長く、500フィートもあった時代があるのであった。もちろんソレに呼応して左中間、右中間もやたらに深い。Death-Valley(死の谷)などと呼ばれたワケが分かる。当然、こうした球場でホームランをかっ飛ばすことは至難のワザで、baseballとは本来まさにbase=土塁を１つ１つ築いて進み得点するゲームであるコトを想像させてくれるのだ。ninety feet away to tie this ballgame! 「このゲームの同点まであと90フィートです！」などという実況に、ゲームの本質が見えてくる。
●今日の１句　　準決はいよいよこの後すぐに騙され午前4時
●今日のもう１句　　室温29度で十分冷える遅咲きの狂夏

■死刑廃止の効用　8/28

　大阪での小学校児童大量殺傷事件の判決が地裁で出た。死刑である。「どうせ死刑になる身なんだから言わせろ」と不規則発言する被告人はすでに犯行当時から完全に捨て鉢の構えで、ある意味で死刑は彼の望み通りの答になってしまったのだった。僕は基本的に死刑反対論者だが、その理由は死刑もまた国家による殺人行為と思うからで、残虐に対抗するには残虐でという社会構造に不安と不信を抱くからだ。しかし今回の事件など、最初っから捨て鉢になって犯罪を犯し、事後も一切の反省や苦悶の精神的状態を露ほども見せない被告人に対して、死刑の実施はあまりにも穏便な措置にも感じられて、なんだか奇妙な気分に囚われる。果たして、彼が望む通りの死刑にしちゃって、それでイイのだろうか？　もっと何某かの苦痛や悔恨を引き出す策を講じることなく、黙ってコロッと殺してやってイイものなのだろうか？　「あ〜ラクチンラクチン」と死んでいく被告の顔さえ想像できて、なんだかフクザツな気分なのだ。もし日本に無期という名目だけの期限付き懲役刑でない終身刑制度があれば、今回の被告の場合などさまざまな訓辞や教育や訓練などといった死刑に勝る負い目が課せられるはずで、それはきっと彼に「生きた地獄」かも知れず、報復あるいは復讐を犯罪の量刑判断の基準にするのなら、報復の効用効果という意味においてもはるかに終身刑は重みを持つと思う。
●今日の１句　　いけね　寝起きの電話にしくじった
●今日のもう１句　　火星は玄関ドアの向こうで光っている

■お天気屋さん　8/27

　そりゃ確かに朝は降っていた。すぐに止んじゃった雨にも雲は濃く、鎌倉散歩にお出掛けのワイフはそれでも一応折り畳み傘持参なのだった。なにしろ「今日は１日雨の予想だったヨ」と昨夜のTV天気予報を当たらないとは分かっていながら老婆心で伝えたのであった。
「あらぁ〜〜〜。また外れちゃったわヨ、ったく」
「ふん。何かワタシがイケないワケ？　予想したのはそっちの勝手でしょ？」
「何ヨ。だいたい今年のあんた、ちょっとワケ分かんないわヨ。どーなってんのヨ」
「どーなってるって言われても、ワタシもこれで、あっちがかゆい、こっちが寒いって、いろいろ事情があんのヨ」
「それにしてもあんた、少しは予報の常識ってモノの範囲で動いたらどーなのヨ」
「それこそあんたたちの勝手でしょ？」
「そーヨ。人間なんだからワタシたちは勝手ヨ、勝手。そのうちあんたなんか全部こっちでコントロールできるようにしちゃうんだから。何サ！」
「イヤぁ〜〜ネェ〜。お天気屋さんってば、自分の予想がまるで当たらないコトを棚に上げてワタシを責めるだなんて、お門違いもイイとこだワ」
「ふん。ホントにお天気屋さんなんかになるんじゃなかったワ。女心と秋の空か……。あ、そいや、もー秋よネェ〜〜〜」
　以上、お天気とお天気屋さんの会話であった。ひゃは。
●今日の１句　　季節迷子の蝉時雨の季語迷子もいたりなんかして
●今日のもう１句　　スパムメールの嵐コツコツと掃除する

■小包の中身　8/26

　午後、ピンポ〜〜〜ンと玄関チャイムが鳴りゃ〜がり、ひょっとして抗生物質の到着かと勇躍玄関まで松葉杖に引きずられて行ったら、大きな小包、小さな小包、ついでだから封書もネと郵便配達は２度微笑むのであった。普段手紙はもとより小包なんてぇものはワイフ宛がほとんどで、その2つが両方とも同時に僕宛なんてぇコトは奇跡に近い出来事なのであった。小さな小包の方から開けると、以前ひょんなコトで贈り物を進呈した女性から、その恋人がシアトルまで出掛けてイチローくん観戦を果たした土産だというので間接的に頂くこととなったイチローフィギュアとバリー・ボンズフィギュア2体があった。以前メールで郵送する旨お伝えいただいた際、玄関まで出られる体力に自信がないと猶予期間の要請をしておいたのだが、「そんなにゃ待ってられないわヨ」と送られたモノであった。次いで大きい小包はアメリカからのモノで、これにはギッシリ6本のビデオテープが入っている。サンフランシスコ近辺のベイエリアにお住まいの女性とネット上で英語実況のハナシで盛り上がった際、僕が日頃見られる限定的な実況でなくもっとバラエティに富んだ実況テープを送ってくださるというハナシだったのだが、まさか6本もいただけるとは！　快哉！　これでオフシーズンの連載原稿ネタにもまるで困らずに済みそうだ。こちらへの返礼には拙著ぐらいしか思いつかないのだが、テープ6巻のコト考えると何だか申し訳なくも思い、おマケを現在検討中。何かないかナァ〜。
●今日の１句　　書けない手紙が１通あるのだ
●今日のもう１句　　１時間の電話は10行のメールで済むかも知れない

■恋愛今昔　8/25

　セガレの事情に関しちゃあんまり知らないのだが、ふと身近な若い女性の恋愛観に深く立ち入る機会があって、そりゃ大いに考えさせられた。彼女の年齢あたりで僕はワイフと出会い、やがて同棲を始めて最終的には入籍を果たしたのだが、別段入籍しなくたって僕ら夫婦の関係はきっと今でも続いていたんだろうナと思う。それ以前に僕は大きな2つの恋愛を経験し、その恋愛は確かに恋愛と今でも考えているがセックスはなかった。こりゃ僕の場合だけのコトなのかも知れないが、僕の恋愛感情の始まりにあったのはいつも憧れだった。相手の女性が僕の憧れるほどに素敵に見える知性を持っていたり、周囲への愛情を振りまくタイプであったりして、確かに異性は異性なんだけれど、何より先に性衝動に突き動かされてというのではなかった。結果としてもそう考えるのだが、だからセックスは恋愛における1つのプロセスだったり、表現手段だったり、一過性の満足だったりはするのだが、僕にとって最重要だったかどうかは今でも分からない。恋愛感情の芽生えからセックスまでの距離や時間の中にこそ、実は恋愛の本質は隠されている気がする。逆に言えば、恋愛と切り離した自由気ままなセックスを、僕はもっとギョーサン経験しておきゃヨカッタとさえ思っている。
　そして今、あるいは今に始まらず僕の若い時分からそうだったのかも知れないが、セックスがあたかも恋愛の必須アイテム(そう。まるで消費できる幸福のためのモノや道具であるかのように)と何の疑問もなく考えられている時代の恋愛は、さぞかし苦しいだろうナ、と思っちゃったりなんかするのだ。そしてまた、恋愛をあたかも孤独を癒してくれる魔法の行為や別次元の世界と考えがちな若い世代にも、僕は大いにクビを傾げたくなるのだった。恋は孤独を後押しはしてくれるが、共存・共感の満足などは一緒に過ごしている時間の中だけで、人間は基本的に孤独なのだというコトを忘れちゃならないのだ。
●今日の１句　　なぜか痛みの質が違って七転八倒だ
●今日のもう１句　　親代わりなんざ誰でもできるんだ人間なんだ

■ワイフの連休　8/24

　昨日からワイフが嘱託勤務先の夏期休暇ということで9連休に突入した。しかし、午前中は相変わらずフランス語会話教室へ、ということでいつもに変わらぬ土曜日。ところがさすがに週日勤務は彼女のプレッシャーにはなっていたようで、夕刻以降の過ごし方にいつもと違ってどことなく余裕が感じられる。そりゃイイのだが、我が家全面模様替えというか再整理活動に燃えるワイフが、ついに万年床＆散らかり放題の美学をもってなる僕の寝室兼シゴト部屋の改造着手を虎視眈々と狙っているので、とっても具合が悪い雲行きなのである。窓際デッドスペースに埋もれているソファを居間に移動し、僕がそこで過ごせば多少なりとも長時間をラクに過ごせるのではないかという優しい配慮なのだが、そのソファ移動のためにはソファの座面にうずたかく積み上げられた雑誌書籍の類の整理回収から始めねばならず、身辺大いに騒々しい状態となっているのだ。
　もっとも8月最終盤のこの時期までに僕はかなり回復をしている予定だったので、2人でヒンジュクあたりにおデートしようなどと言っていた予定はキャンセルされ、彼女は1人で鎌倉あるいは箱根あたりへの日帰り旅行を画策中の様子。ちょっと申し訳ない気持ちもあるのであった。ところで思い出した。ちょうど去年の今頃からヌーヨーク１週間の旅をしていたのだった。考えてみると脚の具合は往復の長時間フライトをこなした後、ずっと本調子ではなかった気もする。イカんよナァ〜。もう長旅は出来ないかも知れない。
●今日の１句　　山積みの下から順の重要度
●今日のもう１句　　テキパキシャカシャカと9日間の共生