■マラソンマン

　という映画が昔あった。ナチの残党とそれを追うユダヤ人。かつての美しくも優雅なシェークスピア役者のローレンス・オリヴィエはすでに「サー」の称号付きとなった老人で陰湿狡猾な風情で演じ、彼に狙われるダスティン・ホフマンは青春映画「卒業」と同じように必死に長距離ランナー的役割を演じるのだった。作品中、覚えているのはほぼ歯科療法的拷問シーンだけで、そりゃ何ともヒドく痛そうな場面であった。あの映画を見たヒトは、ゼッタイ2倍増しに歯医者恐怖症となったであろう。僕は身につまされて拷問に自分はどれほど堪えられるかを考えたのであった。ふんむむ。
　おとついワイフとの会話に、相次いで発覚する刑務所の拷問的体罰死の話題になった時、溜め息混じりに僕は言った。「やっぱし、刑務所に入っちゃダメだナ」と。日本の刑務所にはきっと懲罰に名を借りた蛮行が戦前と同じように存在するに違いないし、日本の男のそうしたメンタリティーというのは、しばしば教育現場やスポーツ指導などの場面でムキ出しになるものだから。不幸なコトに、それはいかがわしくも隠蔽されたDNAででもあるかのように、時にさまざまな場面でアタマをもたげる。
　さてこの僕は、日々の拷問的痛みに対して果敢かつケナゲにもじっと踏ん張って堪えている勇気ある意志のヒトではまるでない。痛めば痛み止め。痛みのない時には過剰なまでに自分に過保護に何の行動も起こさずに暮らしているので、ヒトサマから心配される資格さえも持ち合わせないのだが、ここのところさらに自分への過保護が上塗りされてこの日記を休んだら、あたたかくも厳しくもハゲマシ＆お叱り＆心配の声をいただいちゃったのだった。自分でまいたタネでもあるし、おマケに痛い痛いと広言するコトさえも趣味の一部にしちゃってるロクデナシなんで、どーぞ過剰な心配はムダとわきまえてしないでいただくととっても助かりますのだった。ひゃは。それにひてもみなさん、拷問受けたら即座に何でも白状しちゃいましよー。あるコトないコト、デッチ上げてでも白状しましょー。僕も刑務所に入ったらそのつもりでいるのでありました。あ。歯医者の前でも白状しますが、その他病院では決して何事も白状しないのであります。
●今日の１句　　問われて名乗るもおこがましい日記なのであった
●今日のもう１句　　窓開け蟄居これ以上ない五月満喫