■ひき逃げ

　現在の居住地にすでに15年も住み続けている。考えみると、こりゃ定住期間新記録更新中なのであった。ふんむむ。移動したい。
　昼過ぎに私服警察官の来訪があって、聞くと近所でひき逃げ事件があったのだそうだ。朝7時から8時の間に起こったらしいのだが、その時間の幹線道路にたくさんの目撃者情報がないってのも奇妙な感じだ。警官からの質問前に被害者の容態をこちらが尋ねたのは、少なくともセガレの学校仲間を含めると、ご近所で知っているヒトのアタマ数が少なくないはずだからなのであった。重態とのことであった。
　とりわけバブル崩壊後に「ひき逃げ」が多くなったように感じるのは、気のせいだろうか？　景気の後退というコトもあって交通量や交通事故の減少が報告される反面、それら数の減った中での交通事故の内容的な悪質化は進んでいないのだろうか？　その場面のドライバーの心中を想像すると、こんな独白を思いつく。
「あ、バカヤロ、こんなとこにいやがって、あ、ヤバい、ぎゃ、どーしよー、困った、ま、イイか、とりあえず逃げちゃおー、ひゃ〜、ヤバい」
　あるいは、瞬時に入院費用、保険のコト、慰謝料などがパタパタパタと回転方式にアタマの中で算出され、恐ろしくなって逃げ出すのかも知れない。それとも真っ先に、ただでさえ苦しい生活の中でしがみついて得ている職場からの解雇の書類が脳裡をよぎるのかも知れない。
　そんなコトをつらつらと考えつつ、ハタと気づいた。僕のように運転免許も自動車も保有しないでいると、いつの間にか今日のモータリゼイションの実態に疎くなっているのではないか、というコトだ。かつてクルマを運転するヒトは、交通機関の専門職としてのプロフェッショナルかさもなくば一部の富裕層だった。しかし、今日毎日あくせくとクルマを転がしている日本人の大半が、「借金で貧しくなってしまった国の、借金で貧しい人々」なのである。やっぱり因果は巡るのだ。クルマは1台5千万円ぐらいにできないものだろうか。※そいや、昔。四畳半のアパート住まいでロールスロイスの中古を乗り回してたヤツがいた。
●今日の１句　　生中継見ないとひねもす元気なり
●今日のもう１句　　ハラワタは日々煮詰まりぬ殺戮弾