■クルーゾー警部

　TVでの映画は、一端見始めるとクセになる。年末年始にあちこちで話題作がオンエアされ、片っ端から見ていたんで、先週もついついそのクセが抜けずに見た。例のブレイク・エドワーズの「ピンクパンサー・シリーズ」を、これまでいったい何度見たことだろう。あの頑迷で、マヌケで、姑息で、正当で、無神経にして繊細なパリ警視庁所属のクルーゾー警部役を演じるピーター・セラーズのはまり役というコトと、ヘンリー・マンシーニの洒落た音楽に魅了されて、くだらないと思いつつ、通算ン10回目の視聴である。
　なにしろ、あの映画のゼータクは最初のタイトルバックに登場するアニメーションによる豪華な演出もあって、娯楽映画の豊かさを僕に教えてくれたシリーズでもあった。とりわけシリーズ2作目(だったか？)からクルーゾーの上役として登場したハーバート・ロムの怪演も手伝って、忘れられない。先週その初期の何本かがBS-2で連夜上映されたというワケだ。
　ピーター・セラーズ演じるクルーゾー警部は、そこはちゃきちゃきのパリっ子らしいフランス語訛りの英語をしゃべる、というところからしてイヤ味があって面白く、演じるセラーズがちゃきちゃきの英国人なのがさらに興味をそそられる。で、今回見ていて時折感じたのは、セラーズの演技のどこかに喜劇王バスター・キートンの優雅さを思い起こさせたことだった。
　ピーター・セラーズが亡くなってしばらく経ったナァ〜とは認識していたし、彼の最晩年の作品「チャンス」は涙なくして見られないほど秀逸で、あの庭師の絶妙な演技とTVの深夜映画で出会ったのがそんなに昔のコトではなかったので、僕はてっきり没後10年程度だとばかり勝手に思っていたのだった。調べてみると、1978年の「ピンクパンサー4」までがセラーズ出演作品、「チャンス」も1979年で、その翌年の1980年の「天才悪魔フー・マンチュー」が遺作なのだと知った。つまり僕はセラーズに関してほぼ10年の時間的誤解を抱き続けていたワケなのであった。
　イカんよナァ〜。10年単位で時代認識を間違ってちゃ。なは。
　昨日おヒサシ節に「ベイスボール英語辞典」の1項目を追加UPしたら、当日の「やり残し感」が皆無という珍しい気分となって、本日はぐだぐだに緊張が緩んでしまった。これではイカんのだ。くっそ。
●今日の１句　　襖の向こうに風邪ひきの愛が寝転がっている
●今日のもう１句　　頂きましょうクシャミと咳のお裾分け