■小説「八月のコスモス」

　昨日もここで書いた河合民子さんの小説「八月のコスモス」を読んだ。作品の良し悪しを評論する気はさらさらない。僕の好きな作品だった。心に残るというよりも肌触りとか感触の記憶に残る作品となった。新聞見開きビッチリだから、原稿用紙に換算して何枚ぐらいになるのだろう。計算するのもメンドクサいけれど、遅読の僕は気になる箇所を何度か読み返すクセがあるので、たっぷりと2時間以上かかって読み終えた。
　僕と同世代の女性の抱える1つの深刻な問題は、更年期を迎えた心身の焦燥感にあるようだ。僕の愛するワイフや彼女の友人たちの多くも、その話題を抜きには会話しない傾向がある。そのワイフの友人たちの多くも、僕は愛している。理由は単純だ。彼女たちが女という性を有する人間であるからだ。閉経期を迎えた女たちなのか、それを揶揄した世間なのかが、結構平気で「女じゃなくなる」などというセリフを吐く。すなわち、女であるということは全く「生殖機能を持つ」ことと同義として捉えられるワケだ。
　予備知識がまるでない初見のメールのご返事で民子さん宛に「乾いた御子さん」のジョーダンを書き送ったら、「乾いた巫女」だったか「ひからびた巫女より」というジョークが返ってきたこともすでに書いた。「八月のコスモス」はまさに、閉経期を迎えた女と2人の男そして自分が産んだ娘の出産期を迎えて女が行動を起こす、という物語だ。
　主人公が愛おしくてならないのは、性を離れて、その離れた先に何物か自由のようなものがあるという想像力に従順に行動をしてしまうところだった。それは「女じゃなくなること」でも、「ひからびていくこと」でもないのに、生真面目な主人公はもっと逼迫感を抱いていて、自由を獲得するための記憶を伴った生活の放棄という行動に走る。
　そこで僕は再び考えるのだ。実は、こうした自らの意志によってガラリと人生を変えきってしまえる一途さも、どこか女ならではの魅力の一部なんではないかいナ、と僕は思っている。強き者、汝の名前は女なり。なは。これだから女好きはヤメられまへん。
●今日の１句　　女しか小説は書けないのかも知れない
●今日のもう１句　　久々の眼鏡の後のしんどさや