■井上陽水を聴く

　英語で「先生のお気に入り」をそのまんま「teacher's pet」と言うと知ったのは、ずいぶん最近になってからだ。で、我が家で強制じゃなくって共生してるワイフのお気に入りの1つが、井上陽水だ。何のこっちゃ。
　そもそもワイフは「男なんてちょいと料理がウマくって、たまに耳許で甘い歌声でも聞かせてくれりゃ、それでイイのヨ」というヒトなので、僕はこれでもせっせと料理もし、若い頃はギターかき鳴らしつつ歌い続けたのだった。ところが、僕に言わせりゃワイフの趣味は最悪で、若い頃にはジュリーこと沢田研二をステキなどとほざきやがり、この10年近くはキムタクの木村拓哉、及川ミッチーなどに好感を抱くフダツキのミーハーぶりを発揮しなすっておられるのだ。で、年々深刻度を増しているのが、歌を聴くんなら井上陽水というコトで、就寝前に自分専用CDウォークマンのようなモノで聴くために、すでに数枚のCDを買ってきて、1人ご満悦に聴いているのだ。
　実はこの僕自身も、初期の陽水の「ウラナリフォークソング」みたいなのは好きじゃないけれど、ソングライターとしての才能はスゴいと思い続けてきた。だから昔は楽譜集も買ったことがあるのだった。ただし僕の声は高校の音楽部所属時代からバリトン質のバリトン声域で、間違ってもあんな高い声はでないのであった。クヤシー。
　少し前、TVで不意に陽水のライブをやっていて、一時期のロック風味から大転向したアコースティックバンド編成のジャズ風味ヴァージョンの演奏にビックラこいて腰を抜かした。早速ワイフにご注進申し上げたら、2日ほど前に最新アルバム『Blue Selection』をご購入あそばせて嬉しそうにしていたので聴いてみた。当家のオーディオ事情の惨状は相変わらず続いているので、オンボロのラジカセでの拝聴と相成った。
　くっそ。イイなぁ〜。好きなコト、勝手気ままにやっていやがる。というのが、僕の正直な感想だ。とりわけTVで聴いた時と一緒で、1曲目の「飾りじゃないのよ涙は」のジャズ風アレンジが出色で、シャッフルするドラム、ウッドベースならではのグルーヴ感が大いに心地よいのであった。僕がもしジャズバンドやるんなら、ああいう安直なノリの音楽やりたいナァ〜というのが偽らざるホンネなのである。むっひゃっひゃ。あ〜、お気軽お気軽。お気軽イチバン。
●今日の１句　　どうだ聴く耳はどんどんヘナチョコになるんだゾ
●今日のもう１句　　フリーにしないで緊縛してください