■「零」がアブナい

　昨日、夜のニュース番組を見ていたら、何かの国会採決の場面が映し出され、議長が法案に対する賛否の投票結果を発表していた。賛成231票、反対0票と電光掲示が表示され、同時に議長の声が聞こえてきた。「0票」は「ゼロ票」と読み上げられた。考えてみると、コレ、何かヘンである。片方が「にひゃくさんじゅういっぴょう」と読み上げられたんなら、その延長線にある「0」は「零」であり「れい」なんじゃなかろうかいナ。
　ワイフとそんなコトあれこれ話してみたんだけれど、彼女は「イイじゃん、どっちでも」なんてコトぬかしやがるんで、僕は熱くなった。どっちでもイイ問題じゃねぇやい。だったら片方を「トゥーハンドレッドサーティワン票」でもう一方を「零票」と言ってるのと、どこがどう違うんでぇ、べらぼーめ。
　確かに近頃「0」は「ゼロ」と耳にしたり発音することが多くなった。野球やサッカーの中継でもスコア「1対0」は「いったいぜろ」と聞く方が多いし、「対」を省いて「いちぜろ」なんて言う場合もある。「いちれい」はあまり聞かない。
　最近滅多に見なくなったが、ゴルフ中継の用語で面白いのが、パー72を標準とするコースに対して大会で首位争いをするようなプレイヤーは65とか69とかのスコアを4日間で積み上げていくので、最終日ともなると「-12」とか「-16」などの表示が現れることもある。で、大抵の実況アナウンサーは「-1」「-3」を「ワンアンダー」「スリーアンダー」などと言い表し、その方式が「-10」までは続くんだけれど、「-11」あたりからにわかにおかしなコトとなる場合が多い。「じゅういちアンダー」などと平気で言うのだ。
　さて、「零」の問題だ。考えてみると僕自身も「れい」とコトバにして発する機会が滅多になくなった。強いてあげれば、1以下の小数点付き数値の場合だけだろうか。気温0度も「れいど」とは言う。そりゃどこか「冷」に通じてイメージしやすいからかも知れないけれど。
　仮に自分の電話番号に「0」が含まれていて、電話の相手にソレを伝える場合にも、僕は習慣的に「ゼロ」と発音する。東京の市外局番は「ぜろさん」と認識しちゃっている。日本語本来の「零」はだから、かなりの存続のピンチなんである。
●今日の１句　　零戦散って収穫ゼロの戦後なり
●今日のもう１句　　カラやウツロが出てくる大言海がいとおしい