■酒席の話題を先読みされる

　そいや、こないだ酒を飲んだ席で、ある若者が別の若者にうだうだねちねちヒツコく説教タレていやぁ〜がって、説教タレられてる方の若者はそれをマジメに拝聴しちゃったりなんかするものだからますます増長して説教タレ続けてる現場に遭遇した。いくら酒を飲んだからと言って、それじゃ赤提灯の居酒屋でよく見かける「若くてまだ右も左も分からない新入社員を前にしてまるで社長気分でグチ混じりの説教をタレる、ホントはうだつの上がらない課長の図」じゃねぇかと見かねた僕は、そういうのも黙っちゃいられない性分で、課長役の若者をちょいとからかった。インテリ気取りのその若者は、内心のコトは知らないけれど、平静を装って僕に答えた。「そういう言われ方をしたからと言って、○○は決して怒りはしません。ただ、言われたコトは一生忘れません」だって。ちなみに○○の部分には自分の名前が入るんで、それもおっとろしくもえげつなく気色悪かったのであるが、面白いからさらに河岸を替えた酒席にも誘い込んで本格的にとっちめてやろうと思ったんだけれど、考えてみるとそれじゃ木乃伊とりが木乃伊の図だった。きゃは。
　夜も深まり、酒も深まり、だんだんと本格的な会話にする予定だった僕が、思わずぎゃふんとさせられたのもそんな頃合いだった。何かの折に「こないだこんなコトがあってネ。実はコレコレシカジカ」と話し始めたら、目の前の相手がその話の後段をすべて知っていたのである。げっ。ど、ど、どーして？と質問するヒマもなく、「だって日記に書いてたじゃありませんか」だって。そーか。マズい。酒席の話題となすべき面白ネタの多くを、実は即座に日記にしちゃっているので、僕はまるで在庫のない問屋状態でその場に居合わせるのかも知れなかった。とてもじゃないけど日記には書けない体験なり、感想なり、思索なんてぇものをしなくちゃ、酒席の友に飽きられちゃうかも知んないナと、深く深くハンセーする僕なのであった。
●今日の１句　　片チャンネルで聴くブルースエットの寂しさか
●今日のもう１句　　遠い90ヤード鳥たちの悲哀
●今日のもうもう１句　　辞書漁り眼鏡漁りの煩雑さ
●今日のもうもうもう１句　　その場に居てみろ句なんざ出ないゼ