■いまどき珍しいキセル

　昨日曜夜もまた、ワイフと新宿ジャズバー「サムライ」おデートを敢行した。何のことはない。ワイフのフランス語仲間の集まりの二次会に顔を出しただけのコト。カウンターで飲んでいたら、隣席にオールバックの男性。すぐに腰のあたりから道具を取り出すと、おもむろに「小粋」などという小さな箱も現れて、それが刻みタバコなのだと分かった。雁首と吸い口が銀の、なんとも懐かしくも羨ましいキセルの登場だ。男性、ゆるゆると煙口にタバコを詰めだし、最後にライターで火を点ける。ぎゃ〜〜〜。カッコイイ〜。
　幼い頃、家業と4人の子供の世話に追われた母親が、どういうワケか僕を預けた近所のオバサンというのがちょいとガラッパチで姉御肌の人物で、僕を膝の上に抱っこしながらキセルをくわえるものだから、なんともイイ香りがして、たまには1服させてくれもしたのだと思う。キセルの様子のイイのは、スパスパと少々気ぜわしいほどに吸い込むとすぐに火種が切れ、切れると同時に金火鉢の縁でカツンと灰をたたき落とす一連の動作にあるワケで、それは何かの儀式のようで美しく、僕の喫煙習慣への憧れはそこから始まったのかも知れない。
　一見、右翼かヤクザかと見紛う男性に、僕はもちろん即座に懇願した。ぜひそのキセルで1服させてくれ、と。こういうところ、僕は人なつこいと言うべきか、図々しいと言うべきか、遠慮がない。それが縁で、即座に友人関係が結べちゃったのも嬉しいが、当面僕はこの男性を「キセル師匠」と崇めて、近々のうちにキセルを手に入れようと目論んでいる。ちなみにその「キセル師匠」、ムーンライトというハンドル名なのか何かのお名前で、右翼でもヤクザでもない物静かで柔和な3人の娘さんをお持ちの人物で、自ら短歌なんぞもおやりになる歌人でもあった。早速、キセルと来れば川柳か俳句なのにネェ〜などとツッコミを入れておいた。
●今日の１句　　大工町の養母の煙管の雁首だった
●今日のもう１句　　寓話にするのにはだったが必要だった
●今日のもうもう１句　　さあこれからアップするのだった