■アナウンサーの微笑み

　今年のレギュラーシーズンが終わった現在も、毎日のようにNHKBSでポストシーズンの大リーグ衛星生中継を見ている。まだベイスボール・シーズンは終わっていないのだ。つまりそれは、毎日のようにNHKBSを視聴することであり、何の義務感なのかほぼ1時間前に報道済みのニュースの繰り返しに過ぎない毎時50分からの「BSニュース」の視聴にもなる。
「以上、BSニュースをお伝えしました」と言って軽く礼をする直前、アナウンサー嬢は少しだけ笑顔を作る。ニュースの最後が何事か快挙であったり、めでたいコトであったりする場合、「にかっ」と笑顔を作ることだってある。彼女にとってソレは、その時間を締めくくるための大事で不可欠な儀礼なのである。礼を失してはならないのだ。なにしろ視聴者の中には「なんでスポーツ実況の合間にいちいち辛気くさい報道なんぞ、それもつい１時間前とおんなじネタのタレ流ししやぁ〜がって煩わしい！　とっとと失せやがれ！」なんて人間もいるのだから、どこかアナウンサー嬢には「せっかくの観戦気分に水を差すようで申し訳ない」とでもいうような態度が、登場時にはあるのだ。
　面白いのは、「以上、BSニュースをお伝えしました（＆微笑）」のコメント直前のニュースが、最後の儀礼に結びつきにくい場合。「一家5人が刃物で惨殺され、警察では現在逃走中の犯人の行方を追っています」とか、「これでいよいよアメリカによる対イラク武力行使の可能性が高まりました」などという場合で、それにしてもアナウンサー嬢の不可欠な儀礼は、それがどんなに薄められた表情であっても遂行されるのである。このBSニュースでは男性アナウンサーが登場することは非常に少なくて、ひょっとするとソレはNHKにも「ムダな挿入番組」の意識があるのかも知れない、などと僕は勝手に類推するのだ。で、視聴者の気分を損ねないためには、ここは「性による分業の利用」すなわち「オンナは愛嬌」という差別的意識を逆手にとって、若い女性アナウンサーの最後の笑顔がマニュアル化しているのでアルマイト。
「今回の台風による犠牲者はこれで5万8千9百7十３人になりました。以上、BSニュースをお伝えしました。ニコッ」
●今日の１句　　アナハイムが甲子園みたいにバカな1日
●今日のもう１句　　秋風には思い切りのない跳躍をする