■無配慮な記者会見

　絶対権力世襲の独裁国家によって拉致された日本人8人の死亡確認という、悲惨としか言いようのない報告に震撼した昨日。それは図らずも稚拙外交あるいはノー感じ外交で名高いニッポンの外交の「ある種の成功」との引き替えによって導き出されたものだった。そのことに言及する気はないが、昨夜のニュース報道画面を見ていて、ああやっぱりこの国を動かしている人間たちの無神経・無配慮は、こんなところにも現れるんだなぁ〜という感想を改めて抱いた。それは拉致被害者家族の記者会見場を衆議院第1議員会館に設定した関係者についても、そこに大挙押し寄せたメディア関係者にも感じることで、ひょっとしたら当の被害家族にも当てはまるものなのかも知れない。
　長テーブルに据え置かれたマイクの前に着座している男性家族と、彼らの背後に起立している妻、母という女たちのあまりにも当然な処遇。これまでも総じて被害家族としての強いメッセージを発してきたのは、僕の耳には女性たちの声に多く、その女性たちはここ数日を、いや拉致事件発生後以来ずっと心痛と絶望と懇願の生活に耐えてきた人たちである。そして昨夜の会見場で起立していた彼女たちは、悲痛な歳月を乗り越えて生きてきた高齢者でもある。その女たちが、会見時間中ずっと起立を余儀なくされている。自身の発言も、だから男たちの肩越しのマイクに向かって中腰となって行うのだった。
　なぜこうも、最も配慮されなければならない人間への配慮が欠けた行為が堂々と、しかも自然に、どこからも文句も発生しないで行われてしまうのだろう。
　数日前のインタビューに答えた被害家族の女性の口からは、「私は戦前の人間ですが、戦前の国家はもっとしっかりしていた」旨の発言があった。人権と国家ということを考える時、被害家族が「国家よ、もっと強面になれ」と言いたい気持ちを非難する気はさらさらないが、相手はまさに戦前の日本と同様の国粋主義と妄動主義と英雄主義に凝り固まっている国なのだということを忘れてはならない。
●今日の１句　　国家は国民を殺す掃除機なんだよ