■我が耳を疑う

　ヌーヨークでのいちばん高い買い物は、ジャズ・マイナスワンの楽譜付きCD16枚という無謀なモノだった。出掛ける前に、自身でサックスもおやりになるギネマさんから「ミキオさん、ヌーヨークに行ったらジェイミーのヤツをしこたま買い込んでいらっしゃい」とアドバイス受け、しばらく練習さえしていないアルトサックスのトレーニング用にと、いわばジャズ用カラオケCDをドッサリと買い占めてきたワケだ。まだ今のところ聴いてもいないが、ベニー・カーター名曲集とかスタンダードがギョーサン入った盤があったり、7拍子、11拍子だなんて、普通の4ビートさえもまともに吹けない僕には無謀なチャレンジ盤まで衝動買いしてしまったのだった。いつから始めよう？
　衝動買いと言えば、地下鉄構内やら街頭など、ヌーヨークではホントにあちこちでストリート・ミュージシャンとかパフォーマンスに出くわした。珍しかったのは、地下鉄構内でのタンゴ・ダンスのペアで（って、タンゴは1人じゃ踊れない：It takes two to tangoって文章をかつて見かけたなぁ〜）、ブルース・バンドには日本人らしいギタリストも見かけた。そのたんび、僕の好奇心はうずき、立ち止まってしまう。タイムズ・スクウェアの分離帯で聴いたボサノヴァ・ギターは、なんだかカラオケ・ギターのようだったのだが、思わず雰囲気に負けて即売人から購入してしまった。帰国後聴いてみて、ちょっくらズッコケている。我が耳は、かなり怪しい。ぎゃはは。
　それに比べ、ヴィレッジのジャズバーでじっくりと聴きもし、それぞれ短い会話も交わせたラウール・ミドンという盲目の歌手、かなり有名なベーシストだということを知らずに「何曲目かのエンディングが急にマイナーに転調するあの曲。アレはホントにビューティフル・ソングだなぁ〜」とか「こんなチンケなエレキベースじゃなくって、フルスケールのアコースティックでは演奏しないの？」などと図々しくも話しかけたら喜んで会話の相手になってくれたハーヴィー・SのCDは、さすがにすんげぇイイ。
　東京でもちゃんとライブのジャズを聴かなきゃいけないナァ〜と、反省しきりだ。
●今日の１句　　帰国後の引き籠もりここは東京か
●今日のもう１句　　骨髄がにゅるっと緩んでいる