■不要な記憶回帰で暗くなる

　昨日の日記「スランプ・シェフの嘆き」を読んだワイフが一言。「フン。女性読者にコビを売って同情を買おうって魂胆が見え見え」だって。いけね。バレたか。
　まったくつきあいの途絶している実の兄から郵便物が届く。開いてみたら、僕の小・中・高校時代の卒業アルバム一式が入っていた。一時期母親も上京して兄と同居したことがあったから、きっとその時に荷物が紛れ込んだのだろう。僕自身は、「過去の思い出なんざいらねぇやいッ！」と上京したつもりではあったが、本当の自分はもっと情けなく、きっと今のアパートの押入のどこかに、それらのアルバムはあるものとばかり考えていた。そうか。やっぱり、ちゃんと棄ててきたのだった。
　で、いったん棄てたモノが今日になって舞い戻って来ちゃったワケなんだけれど、高校の卒業アルバムを見て大笑いした。そうだった。僕の高校生活はほぼ真っ暗けのヶで、病気休学で2年も遅れていたこともあったし、70年安保を控えた1969年の学園紛争後の無気力が蔓延し、教育不信や学校そのもへの蔑視、仲間との交流の薄さもあって、僕はひどくなげやりだった。クラス別の個人写真を見たら、当時の僕がいた。音楽部の部室の大きな戸棚の中で見つけたコントででも使いそうな牛乳ビンの底みたいな「黒ブチ超ど近眼メガネ」をかけて、僕は写真に収まっていたのだった。何事かへの反抗の「つもり」だったのだろう。学生服の両袖はわざと切り落とし、背中は真ん中の縫い目に沿ってタテにまっぷたつにして着ていたと記憶する。クラスの集合写真を見ると、後ろの方の何人かは意図的に隠れていたり、横向いたり、フザケている様子なのだが、そんなコトにいちいち目くじら立てていたんじゃいつまで経ってもラチがあかないと、町の写真館のオヤジも適当にシャッターを押したのだろう。僕もアタマ半分だけの出演になっていた。
　考えてみると、そりゃ「荒れた学校」なんじゃないのか？　「反権威」と気負っていた30年も前の僕の時代以上に「権威なんぞに無頓着」のはずのセガレが映っているこの春の高校卒業アルバムでは、無秩序ながらみんな笑顔が弾けていた。
　ちぇ。要らんモノ送りつけられちゃったいッ。
●今日の１句　　モノクロの写真の黄ばみ時の涙
●今日のもう１句　　フテクサレを再提示されてもなぁ〜