■ハイになって俳になって灰になる

　21歳の人妻だった今は独身女性に会いに行くために台風接近の中、のこのことヒンジュクまで出掛けた。いきなり財布を忘れて家と駅を1往復半してクタビレ果て、「サムライ」に青息吐息虫の息で辿り着く。つい最近、大切なヒトとのおデートに30分遅刻して青くなったばかりなのに、昨夜は40分の遅刻。安心した。おデート相手はそれから30分後にやって来た。台風なのだ。仕方ない。黒いノースリーブのワンピースは、ちょっと喪服の趣。彼女とこちゃんは、結構そういうコトを平気で企てる。長く白い腕が美しい。「筋肉質なのよ」と言うから触って確かめた。「腹筋も鍛えてるんだよ」と言うから、それも確かめた。ヌードモデルをやったと言う画家からもらったクロッキーも見せてもらった。「画家のモチフになるには絶好のカラダだと思う」と賛美しといた。やせっぽっち。
　とこちゃんを11時過ぎに帰し、第2ラウンドが始まった。カウンターに三亀さん。「どういうステキな女連れか覗き見に来ました」とのこと。「雰囲気のある女性でした」と賞賛される。腹筋や腕の筋肉を指でつついて確かめていたあの行為は、三亀さん、店主の宮崎二健さんにしっかり目撃されていた。帰りがけにとこちゃんにしてもらった「はぐはぐ」について話したら、三亀さんがヨダレを垂らした。カウンター内のハマちゃんが「はぐはぐなんて軽いものよ」と言い、僕と実演した。空手名人の筋肉美女がはぐしながら、思わず「きゃ、華奢〜」と叫んだ。僕もやせっぽっち。三亀さんはえらく幸せそうだった。
　ハイになって、俳句談義になったら、止まらなくなった。客が帰ったら週末に店内で開催する写真展のためのパネル作りに時間をアテ込んでいた二健さんが、烈火のごとく怒った。無理はない。外はギンギラギンの台風一過。どこにも朝の風情はなく、ハイヌーンの景色だった。灰と化してタクシーに乗り込んだ。
●今日の１句　　俳人になるより先に廃人か
●今日のもう１句　　バーボンが目減りしていく夜明けかな