■掌へ

　1984年3月22日生まれのキミは、だから今18歳の青年だ。奇跡的に都立のぐ〜たら高校を無事卒業し、キミは明日、いよいよロサンゼルスへと旅立っていく。キミに告げる。帰ってこなくてイイんだヨ。たった１年間の語学留学がキミの役に立つモノだとも思えない。どうやらキミはギター２本も持参するらしいから、きっと音楽方面の経験に期待してるのだろうと思うけれど、できりゃあちこち旅をしてみてくれ。南部や中西部なんて、僕がテレビや物の本でしか知らない世界を、肌身に感じて体験してくれ。不幸にも事件や事故に巻き込まれたとしても、自分１人で解決してくれ。体験が充実しているのなら、万が一キミが命を落とそうとも、僕はきっと祝福の気持ちを抱くだろう。
　掌へ。キミに命名した僕の意図は、初めに「Show」ありきだった。次いで、ワープロ検索して見つけた「掌」は、知識に頼らず何事か「手による巧み」を身につけて欲しいという気持ちからだった。才能のあったピアノは、キミ自身の放棄宣言でやめてしまったけれど、音楽を指向するキミを僕は応援している。覚えているかい？　音楽をやるんなら、目先の流行に左右されることなく、70のジーサンになっても堂々とやれる音楽をしろって僕が言ったセリフを。それ、大事だぜ。
　キミがとりあえず必死に体験するアメリカに、something goodが待っていることを祈る。僕は目の前にいた煩わしい青年の不在をチャンスに、これまで以上に自分表現に邁進する。勝負じゃ。愛してるゾ。
※ん？　今夜はお別れ３人麻雀大会にしよっと。