■豪腕は黙して語らず

　おとついの深夜にＣＢＳドキュメントの抜粋番組をＴＢＳで見た。偶然、取り上げられていた話題がロジャー・クレメンスだったので、途中からではあったが見た。ＣＢＳのニュースは切り口が面白く、それぞれのインタビュアーというか記者も個性的で、アンカーマンのダン・ラザーの信頼に足る感じの物腰といい、僕のいちばん好きなニュース番組なのだ。で、当夜の企画は「打者に狙ってぶつける」という評判の高いクレメンスに、なんとかウォレスというおじさん記者が、それでも恐る恐る質問をぶつけちゃったりなんかして、非常にスリリングだった。ひゃ〜。こわ。
　クレメンスはヤンキースの投手で、テキサスっ子で、マウンド上ではいつも「ガルルゥ〜」とケンカ腰で投げるのが有名な、あまり僕などお近づきになりたくないプレイヤーである。今年も投手最高の栄誉サイ・ヤング賞を受賞した。
「あなたは、打者をわざと狙ってるというウワサがありますが」
　ひゃ〜。そんなコト聞いたら殺されるんじゃねぇか？？
　クレメンス「…………………………」
　ひゃ〜。まったくしゃべらないゾ〜ッ。こわ。
　同僚のデレク・ジーターやブロシャスへのインタビューが続く。
「ああ。そういうウワサがあることは知ってる。彼が味方で良かったヨ」
「僕も以前１度、思い切りぶつけられた。なにしろあの年は彼をよく打ってたからネ」
　ぎゃ〜。ホンモノじゃ。やっぱりウワサは正しかったんじゃ。
　クレメンス「…………………………」
　かくしてメッツの主砲ピアッツァを筆頭に、来年も戦々恐々の打者に向かって豪腕が
投げる。あ〜、オモシロ怖い。